満月の夜に魔女はワラう 第一部 新月の微笑

3-Ⅴ

「ここね。」

数十分後、誠と綾香は千草の祖父の家の前にいた。

時間は深夜12時、辺りは寝静まっている。

「部屋はあそこ。」

綾香はそう言って二階の部屋を指した。

「は?そこまで行くの?」

誠は素直な疑問を綾香にぶつけた。

「ポストにでも入れときゃいいじゃん。」

誠は当然というように綾香を見る。

「やだ。」

「なんで?」

「つまんないじゃない。」

「………はぁあ?」

こうなった綾香には何を言っても無駄である。

「はいはい。」と誠は仕方なく頷いた。

「で、どうやって?」

誠はどうやって鍵を開けるのか、二階まで行くのかを考えていた。

「飛ぶよ。」

綾香はそれだけ言うと杖に腰を掛けた。
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