36.8℃の微熱。
 
『まもなく電車が発車致します。危険ですので黄色い線の内側までお下がりください』

「・・・・ああああっ!! 待って!! 乗ります、乗りますからっ!!」


駅の改札を駆け抜けると、あたしが乗る電車の最終アナウンス。

悲しいかな、駅員さんとはもうだいぶ前から顔馴染みのあたし。

そう叫びながらバタバタとホームを走っていくと、指差し確認中の駅員さんは「早く乗りな」と。

半分呆れた顔で笑った。


そうして電車に滑り込んだら滑り込んだで、またまた顔馴染みのステキな老夫婦に出会う。

息子さんが病気で入院中だというご夫婦は、お見舞いのため毎朝同じ時間の同じ車両に乗っている。

ユカ様と話さなくなり、先生のことも諦めたあとからよく見かけるようになって、今ではすっかりお友だち・・・・というか、孫。


「今日もうるさいわい」と眉間に深くシワを寄せておじいちゃんが言えば、おばあちゃんは「楽しみになさっているくせに」とおかしそうに笑う。

「すみません、騒々しくて・・・・」と、あたしは決まって苦笑い。

これが毎朝のほっこりタイムだ。
 

< 491 / 555 >

この作品をシェア

pagetop