愛されて

「あのう…私、今日で遥香さんの家庭教師、やめさせていただきたいのですが…」

井上先生が突然、言い出した。

洋平の推薦の話しを聞いた日。

私が学校から帰ってくると、井上先生はもう来ていて、おばあちゃんやママと楽しそうに話していた。

すると…突然。
井上先生が…
“やめさせていただきたい”と言ったのだ。

その言葉にママとおばあちゃんは驚いていた。

「どうしてですか？」

「何か…遥香が失礼なことでも…」

私が井上先生から、罰として手を切られたことなど…
おばあちゃんは知らない。

「最近、遥香さん勉強に集中出来ていないみたいで…そんなに集中できないなら、私が勉強を教えても無意味ですし…」

井上先生はきっぱりと言った。

「すみません。でも…この子が女子大付属に入学するためには、先生のお力が必要なんです。先生に不快な思いをさせてしまって…すみません」

おばあちゃんが頭を下げた。

頭を下げるおばあちゃんを見て。
何だか、バカバカしくなった…

手を見る…
こんなこと、されてまでも…この先生に見てもらおうなんて思わない。

本当にそう思った…

私は気づいたら。
「先生がやめたいって言うんだから…やめてもらった方がいいんじゃない？」
と言っていた。

怒ったのは…
ママでもなく、おばあちゃんでもなく。
井上先生だった…

「そう…あなたがそんな態度なら、私はもう…あなたの勉強はみません。女子大に合格できなくてもしりませんからね…」
井上先生はそう言って、リビングを出て行こうとした。
ドアの前にいた、私は…井上先生からビンタされた。