群青世界 ~忘れられた空の色~
今度は彩己が絶句する番だった。

「私…厭ぢゃない!彩己が好きだもの!」

彩己は言い表せないくらい曖昧な表情をしていた。

嗚呼、均衡は崩れてしまった。

葉月は絶望した。彩己がいけないんだ。彩己がいけないんだ。

「私…莫迦なこと云って…帰るわ」
「待って!」

彩己が手首を掴んだ。それは驚くほど強い力で、ああやっぱり彩己は男の子なんだと遠い意識の向こうでぼんやり思った。
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