ろく

なるほど。

六人兄弟の六番目だからろくねえ。

安易だなあ。

じゃあ、上は「五郎」だったりして!

……って、どうでもいい……


「おい! おいって! こっちは名乗ってんだい。お嬢ちゃんも名前ぐらい教えるってのが筋ってもんじゃねえのかい?」

−ああ、すみません。


私は嘘の名前を教えることにした。

何も二度と会うことのない、しかも猫に名前なんて教える必要はない。


−みずきといいます。


ろくの細くなった黒目が、一瞬、更に細くなったように見えた。


「嘘だね。お嬢ちゃん、嘘言っちゃいけねえよ。猫を舐めんなよ!」


バレてる。

しかも、なんか、フーとか言われてる。

犬歯(この場合は猫歯か!? いや、どうでもいい)も半分見えてる。

……威嚇か?

威嚇なのか!?
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