花が咲く頃にいた君と
「東向日はあたしの“特別”なの」

「“買い主”だからでしょ」

「ちがっ、そうじゃない」


握った拳、込み上げる嗚咽を隠す様に、口に押し当てた。


弱くなってる。

東向日に嫌われることを、何よりも恐れている自分がいる。



何て言えば、東向日に伝わる?



「東向日が大切なの。“買い主”とか関係なくて、傍にいてほしいの」


涙がポロポロと流れて、下にいる東向日の服の上にポタポタ落ちた。



「ごめん。イジメ過ぎた」


低く呟いて、寝転ぶ自分の胸にあたしを抱えこんだ。


埋め込んだ顔、東向日の穏やかな鼓動が聞こえた。


服はしっかりあたしの涙を吸ってしっとり濡れた。



「冬城さんが“買い主”なんていうから、拗ねちゃった」


ちょっと笑いを含んだ声が、東向日の体を震わせあたしに伝わる。


その声はいつもの優しい声で、あたしの涙は安心に変わった。



「あたし、今、プロポーズみたいなこと言った」


鼻をぐずぐず鳴らしながら、額を東向日の胸に擦り付けた。


「じゃ、“おあいこ”だ」



東向日がクスクス笑う。


胸が上下して、あたしは照れ臭さに、顔を上げられなかった。



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