花が咲く頃にいた君と
確か、どこぞの会社の部長さんとかで、20前半と若く見えるが、実年齢はけっこういってるらしい。(本人談)


「いらっしゃいませ」

営業スマイルで出迎えると、衣夜さんはネクタイを弛めながらあたしの前に座った

「Spritzer」

「はい、」


あたしは短く返事をして、シャンパングラスに白ワインとソーダ水を入れてステアする。

出来上がったカクテルを、スッと衣夜さんに差し出すと、彼は“ありがとう”と一言いって、飲み始めた。


少し緩めたネクタイから覗く喉仏が妙に色っぽくて、伏せめがちな瞳はとても扇情的で思わず息をのんだ。



それからすぐ、下宮比さんが来て、あたしは元の持ち場に戻った。


22時30分、あたしはお先に失礼する。あたし的にはまだまだ働けるけれど、下宮比さんは帰りの夜道を心配して、あたしを早く帰したがる。

実際はもっと早く帰したいのだろうけど、お店の状況的にそれは無理で、どうしても22時を回ってしまう。


しかも、送迎までしようとしだすから、困ったもんだ。あたしの心配するくらいなら、お店の心配をしてほしい。

下宮比さんは実の父親よりも、よっぽど父親らしい。


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