花が咲く頃にいた君と
今の心情を悟られたく無かった。


もう、病気で死ぬことは無い小夜。

失う恐怖に怯えなくてもいいけど、状況はあの頃とは違う。




あの頃より成長したあたしは、汚ない心を持ってしまった。

いくら誠実でいようと決めても、混じり出る黒。


それをあの頃と何も変わらない、真っ白の心の小夜に知られたくない。


本当のあたしを知られたくない。



もし知られたら、今度は小夜があたしから離れて行ってしまうかもしれない。




そんなの、あの頃抱いていた失う恐怖と何も変わらない。



「あたし、帰るね。じゃっ」



あたしは小夜から視線を外し、踵を返した。


視線が泳いでしまう。
胸がドキドキいって落ち着かない。



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