待っていたの
子供の足で45分強もある家までの道を歩いた。


「覚えていたのか?」

不安だったのだ覚えているかどうか。


「はい…わたしもその神託を受ける事はできませんか…?このままでは親不幸です」

「神託を受けたからと言って、帰れることはない」

「でも…陛下は、私の世界にきたではありませんか?」

「それはお前が月妃だからだ。特別な存在だからにほかならぬ」

「……」

落ち込む彩に目線を移す、特別の意味を考える。


「目覚めたあと言われた、お前が俺の妻になるべくして生まれたものだと」

「妻になるべくして」

彩は陛下の妻になるべくして生まれた。


――それ以外の価値はない。


彩の顔が歪む、それは泣きそうに今にも雫が落ちそうに。


「そうだ、ずっと待っていたお前が来るのを…何年も…」

「そう…ですか」

俯き青薔薇がささった髪に表情が隠される。


唇を噛み締め、スカートを握りしめる。


「悪かった……その無理矢理……してしまって」



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