待っていたの

まずは情報を集める事が必要だ、そうしないと動けないだろう事を彩は知っている。

――なんとかして、帰らなくちゃ。


案内してもらう門番に、お礼を言う彩、すると本まで運んでくれると言う。

「台車を貸してください」

「何ですかソレは?」

作らなければ不便なはずだ。
この世界には、台車はない。
とりあえず文字は読める、言葉も通じる。

もっと早くに気づくべきだった事と嘆息した。


(迂闊だった…でもなぜ?
この国に、同化したの?それとも身体が作り替えられた、何にせよラッキー?)


「やだ……」

だが地位があると、逃げ出しにくくなる。
縛られてしまう。

とりあえず、歴史書を10冊と紙とペンを貰い、そして何冊か美術の本を借りる。


白夜の寝室にまで立ち入る事は出来ない門番が、扉に重ねておく。


それを三冊ずつ自分の部屋に持って行く彩。

「重い……」

分厚い本を机に置き、夜まで読み耽る。

時にメモをとりながら、夜まで熱心に読む。


白夜が帰ってきた事も気づかない位に、彩は集中していた。



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