待っていたの

という事は、昨日のアレは陛下の命令があったから行けただけだったのだ。


「おめでとうございます、私は法宮彩といいます、お名前を伺っても?」

30歳くらいの気のいいにぃちゃん風な彼の名前は、颯 疾 さつ はやて。


「今日はどこに行くんだ?姫さん」

どこか軽い雰囲気のヤンキー兄ちゃん、そして崩れた言葉が嬉しいし、彩には楽だった。


自分を作りすぎてダメになった、彩。
頑張って頑張ろうとする彩だからこそ、パンクしてしまった。


「疾 私、厨房に行きたいんだけど…?入れるかな?」

「入れるかはわからんが、頼めばどうにかなるか…?」

彩を気づかっていないようで歩調を合わせ、綺麗な花が咲いている回廊を選び、厨房まで連れて来ていた。
足の長さも、歩調も違うふたりだが疾が合わせる。

「お忙しい所大変申し訳ありません、厨房を見せて頂きたいのですが?」

中から黒い肌のひょろ長い男から、昼過ぎならいいとお許しを貰う。

(彼が料理長さんかな?)



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