待っていたの
帰りはメイドさん達が、床を拭き掃除していたので、別の道を選ぼうとしたら、全員が屋根から出て庭の下の土に跪ずき、彩は唖然とする。


「あの…?」

困った顔で疾を見ると、疾は平然としている。


「姫さんだからな?」

と返答を返された。


「私…?でも、せっかくの洋服が汚れるよ?あ、私にも掃除道具借りれる?」

洋服の裾を少しあげて片膝を付き、額を土に擦りつけるメイド達に尋ねる。

メイド達は一様に無言だ。
顔もあげない。


困って疾を見る。
疾は頭を振り、立つように手をとり促す。


「掃除道具が欲しいなら、俺が取ってくるから」

「うん…」

後ろ髪を引かれるように、廊下を進む。
疎外感を感じた。


(やめてよ、だって跪ずけなんて、言ってないよ…。)


陛下に跪ずくなら、分からなくもないが、彩に跪ずく必要ないのだ。


長い道程を歩き、陛下の寝室に入る。
昇進したが疾は入れないらしい。



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