待っていたの

三歩後ろを歩いて、ついて行けば、栄達に会う。


もう彩はこの人にときめかない、さん付けもやめた。

ただ下を向いていた顔をまた下げて礼をとるだけ。


「姫…白夜、無茶しなかった?」

白夜から彩に移された視線、彩がその問いに答える事はない。


「姫…無視?さみしいなぁ」

少しもさみしそうな声を発していない。


「彩、聞かれたら答えろ」

「はい、陛下」

「へー…ずいぶん従順になったじゃん、あの糞生意気な姫じゃなくなったんだ?」

悪意に満ちた視線、言葉。全身から嫌いだというオーラが放たれている。

「その節は大変申し訳ございません。わたくしもまだ不慣れでして、存じませんでした」

口だけはまわる、あの青嫌いの発言の事を謝る。
ただ口だけで…
今この青を着ている事も嫌で嫌で仕方がない。


「そうだよね、わざとな訳ないよね?」

ニコニコと瞳は笑ってない顔で笑う。
気持ち悪い作り笑いだ。


――こんなものでキャーキャー言って、私に嫉妬するのなら貴女達に譲ってあげる。
メイドさんが頬を染める様子に毒づく。



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