二,吸血鬼

いつも通りの、普通の日常。

そんな普通の日々が、初めて幸せだと思えた。



あの恐ろしい吸血鬼なんかの姫になどならなくてもいいんだ。




少し、嫌な夢を見てしまっただけ。


ただそれだけのことなのに、こんなに嬉しいだなんて。



なんだか変な感じ。



やっぱり吸血鬼なんてものは、この世には存在しない。


物語の中だけの世界。




「美由、おはよう」


後ろから肩を叩かれたので振り返ってみると、親友の野川 奈津が(のがわ なつ)が私に微笑み掛けていた。


奈津とは小学校の頃からの友達だった。


そんな奈津と教室まで他愛のない話をしながら向かった。



もう、吸血鬼が出てきた今日の夢のことなど、綺麗に忘れていた。




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