七狐幻想奇譚
そんなに多くはないが定番の焼きそば、たこ焼き、りんごあめなどの出店も並ぶ。花ヨーヨー釣りは女の子に人気で、好きな花が釣れたときの嬉しさはひとしおだ。



この日のためだけに、世間では名も知られてない歌人が民謡を披露する。幻想的で、どこか懐かしい――これを聴くためだけに遠方から訪れる熱心なファンもいるとか。別に特別な歌ではないのに。でも、ある人はこう言った。



目まぐるしく過ぎてゆく日々の中で、いつしか忘れてしまった、そんな唄――なのだと。



幻想的な灯火の中、扇も鈴も持たずに巫女は、誘いの舞をまう。



亡くなった祖母から聞いた話では、この町の守り神として崇められている狐がいて、その狐を喚ぶための祭りらしい。



小さなため息を零す。



正直馬鹿馬鹿しかった。



どうして大人は伝統行事を大事にしたり、いるわけないものを信じたり、敬うのだろう。



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