ブルービースト

「…ならもういいです。私は戻りますね」


馬鹿馬鹿しいとでも言わんばかりに肩をすくめ、ユノはそこを去ろうとする


──…ように見せかけ、彼女は素早く写真立てに手を伸ばした。



しかしさすが副隊長。



抜群の瞬発力でサッとそれをかわす。




「…チッ」


「女の子が舌打ちばっかしない!幸せ逃げるぜ!?」


「それ溜め息でしょう馬鹿ですか貴方」



あぁ、いたのがレイツじゃなければよかったのに。



本気で彼を疎ましく思ったユノは、そいつを一睨みしてから今度こそフロアリビングへ向かう。




──…あの写真は今度見よう。


いくらでも機会はあるはずだ。











「……ふぅ。やっと諦めた…」


ユノが去ってからしばらくまた来ないかと身構えていたレイツは、彼女が本当に去って行ったとわかるとホッと力を抜いた。



写真立てを元のように机に戻し、それを見つめる。




「…はぁー、あいつも馬鹿だなぁ。こんな目につくところに置いてちゃ誰だって気になるっての」



…それをわかっていて隠さないのは、彼の想いがそれだけ大きいということなのだろうか。



詳しくは知らないレイツには、そこは図りかねる。




< 96 / 309 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop