ブルービースト
「…ならもういいです。私は戻りますね」
馬鹿馬鹿しいとでも言わんばかりに肩をすくめ、ユノはそこを去ろうとする
──…ように見せかけ、彼女は素早く写真立てに手を伸ばした。
しかしさすが副隊長。
抜群の瞬発力でサッとそれをかわす。
「…チッ」
「女の子が舌打ちばっかしない!幸せ逃げるぜ!?」
「それ溜め息でしょう馬鹿ですか貴方」
あぁ、いたのがレイツじゃなければよかったのに。
本気で彼を疎ましく思ったユノは、そいつを一睨みしてから今度こそフロアリビングへ向かう。
──…あの写真は今度見よう。
いくらでも機会はあるはずだ。
「……ふぅ。やっと諦めた…」
ユノが去ってからしばらくまた来ないかと身構えていたレイツは、彼女が本当に去って行ったとわかるとホッと力を抜いた。
写真立てを元のように机に戻し、それを見つめる。
「…はぁー、あいつも馬鹿だなぁ。こんな目につくところに置いてちゃ誰だって気になるっての」
…それをわかっていて隠さないのは、彼の想いがそれだけ大きいということなのだろうか。
詳しくは知らないレイツには、そこは図りかねる。