春夏秋冬
「ごちそうさま。」
「お粗末様でした。ほらお弁当。」
「ありがとう。」
「早めに行くんでしょ?」
「あ、そうだった!!」

慌ててスクールバックを手にし、貰ったお弁当を丁寧に入れる。

「忘れ物は?」
「ない!」
「回数券は?」
「持った!」
「歯磨きは?」
「あ、まだだ!!」

再び肩に持っていたかばんを下ろし、洗面所へ走っていく。
しばらくして、急ぎ足でリビングに戻って来た。
そして、かばんを持ち、玄関へ行く。

「お母さん、行ってきます!」
「いってらっしゃい。頑張ってきなさいよ。」
「わかってるって。」

ドアの隙間から見えたナツミの笑顔。
母は安心して、リビングへ戻る。

「ナツミの笑顔。何日振りかしら…」



−−−−−−−−−−



自転車を漕いで約15分。
彼女の住んでいる町の駅に着く。
自転車を駐輪場へ停めにいき、
中へ入っていく。
改札口で、一昨日買った回数券を通し、
階段を上がって駅のホームへ行く。

「間、に、合、っ、た!!」
「……あれ?春じゃん。」

階段をリズムよく上がり、上がりきったところで、よく見かける顔を見た。

「………ナツか。」
「春!おはよう。アレ?今日どっか行くの?」
「まぁ…」

近くまで行き、ナツが話し掛ける彼は、
田中春斗。
ナツミの幼なじみだ。
見た目は、ショートカットの茶髪に逆光の黒縁眼鏡。
ポロシャツにジーパンと、イケメンとは言い難い姿をしている。
中学までは同じ学校だったが、
今年の春になって、二人は違う学校へ通う事になった。
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