春夏秋冬
「春がこの時間……あ!コミケか!」
「馬鹿っ!!声でかいって。」
「あ、ごめん。」


コミケというのは、オタクが集まる聖地だ
すなわち、彼はオタク。見たまんま。


「ナツは学校か?」
「そう。今日からだよー。」
「あぁ、通信だったな。」
「そうだよー。」


彼は、彼女を見つめ、ため息をつく。


「春!人に対してため息とかありえない」
「ブタが騒ぐな。」
「なっ!!この2次元オタク!!」


彼女、ナツミは、他の人よりも若干ぽっちゃりしている。
芸人でいうと、柳原可奈子だ。
そこまでは太ってはいないため、
中学の時は、リトル柳原と言われていた。


「懐かしいな…リトル柳原。」
「ちょ!春の馬鹿!!」
「事実なんだから、馬鹿って言われたくないな。」
「くそー!私も綺麗になってや…あ、」
「なんだよ。」
「春!来月の春の誕生日。空けといてね」
「…………」


彼は言葉を聞いた直後、
癒そうな表情を彼女に見せた。


「ちょっと!何よその顔。」
「この歳にもなって、誕生日を幼なじみとかよ。」
「いいじゃん!毎年恒例なんだから。」
「たまには、違う奴と過ごしたい…」
「え、春…彼女いるの……?」


一瞬、時間が止まったかのように見えた。
彼女は、目を見開いて、彼を見る。
彼は、頭をポリポリかきながら、やってくる電車を見つめた。

やがて、目の前に電車のドアがやってきて、プシューという音と共に開いた。


「今年、コミケ行こうと思ってたけど…」
「え……?」
「ナツと過ごすのが当たり前になっちまってるからな……」
「それって……………」
「ほら、行くぞ!!」


不意に繋がれた手は、
ドキッとして、そして、まだ、傍にいてもいいんだなと、感じた。
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