1億の☆
「・・・・・・・・ムリ・・・」
コイツの性格なのか、肩書きなのか、何が一番引っかかるのかは自分でもわからない。
とにかくコイツとの生活が、これっぽっちも考えられず、私は藤堂類に背を向けて、足早に階段を降り始める。
「帰るっ!!」
「・・・はぁ!?
おいっ!?ちょっと待てよ!!」
「ぃいやっ!離してっ!!」
掴まれた手を必死に引き剥がそうと振り払うが、藤堂類の力の方が強く、逆に引き寄せられ、向かい合う形になってしまう。
「何、帰るって?どういうつもり?」
「・・・・言葉のまんまよ。
アンタみたいなヤツと結婚なんか出来ない。」
階段の段差もあってか、真上から見下ろす目はとても冷ややかなものに感じ、一瞬怯んでしまう。
それでもこんなヤツに負けたくなくて、精一杯睨みを利かす。
「フッ、気の強えー女。
でもそれを決めるのはお前じゃないだろ?」
冷ややかな笑みを浮かべた藤堂類の一言が胸に突き刺さる。
何も言い返すことが出来ず、最悪な現実を思い出す。
自分に帰る場所はないことを…