ラスト プリンス
「分かりにくいのよ。耕太の優しさは」
だから勘違いされちゃうの。
口調や態度は毒々しくて刺々しいかもしれないけど、言葉の節々にはちゃんと優しさが隠れてる。
不器用なだけ。 カイさんみたいにストレートに優しさを表現出来ないだけ。
不意に。
耕太の両頬を包んでいた手を強引に掴まれ、そのまま引き寄せ耕太の胸にぶつかった。
ぎゅっと背中に回る男らしい腕が苦しいくらいにあたしを締め付ける。
はあ、と。 耳元でため息が聞こえ、耕太の頭はあたしの肩に乗ってることを感じた。
「………ついに惚れた?」
囁かれた言葉はなんだか熱が籠もっていて、心臓がぎゅんっとした。
ばっかじゃないの?
自惚れてんじゃないわよっ。
って言いたいところだけど。
「惚れるわけない。 ……でも、嫌いじゃなくなったわ。 全力で。オトしてみなさいよ」
「時間の問題だと思いますよ? 梨海さん」
そう耳元で囁く耕太の声は耳にちょうどよくて、じわりと熱を帯びていく。
それを気付かれるのが嫌で、耕太の腕の中からするりと抜け、踵を返した。