【続】俺様王子と秘密の時間


「ごめんなさい……」


あたしのせいで。

千秋は全身びしょ濡れ。



「風邪……ひいちゃうよね」


ほんとに申し訳ないっていう気持ちがこみあげてきて、あたしは千秋の瞳から目線を落とした。


そんなあたしの頬を優しく撫でてくれる。



「なに?あっためてくれんの?」


ずぶ濡れになってまで涼しい顔。

千秋はほんの少し顔を傾けて、挑戦的な瞳であたしを見下ろした。



決して積極的な方じゃない。

目が合うだけでドキドキする。

キスをすると胸が熱くなって。

いつも恥ずかしくて顔が火照る。


だけど……。

だけど……。




「ほんとに……ごめんなさい」


ギュッ……と、千秋の冷たい背中に這わせた両手に力をこめる。

ぐっしょり濡れた千秋の背中は、前よりも近くに感じられた……。



千秋への気持ちが膨らんでゆく。



泣きそうになるくらい……。

 

< 106 / 658 >

この作品をシェア

pagetop