【続】俺様王子と秘密の時間


うわ〜〜ん!

髪の毛が酷いことになってる。


あたしはしばらく寝癖と格闘していたんだけど、ちっとも直らないから諦めて急いで家を出た。


もう、遅刻寸前だ。



雨の日は嫌い!


肌寒いし風は冷たいし湿気で髪の毛がボサボサになるし、また羽鳥に笑われちゃうかも……。


そう思った時、胸が痛んだ。


もしかしたら羽鳥はあたしと顔を合わせてくれないかもしれない。


すごく自分勝手かもしれないけど羽鳥に無視されたらって考えただけで、悲しい気持ちになる……。

千秋との夜はとても幸福な気分だったのに。



下駄箱に着いて靴を履き替えていたら……


――バタンッ


一番端にある下駄箱から音が聞こえた。


あれ……?


あの下駄箱はもう誰も使っていないハズなのに。


誰かが通りすぎていくのが、一瞬だけ見えた。



黒髪、長髪……。

そして苦いタバコの香りがした。

 

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