【続】俺様王子と秘密の時間
飛びこんできたって。
それを聞いたらさっきまでの強がりは、もう意味を持たない……。
あたしの腰を抱き寄せる千秋の、水を含んで冷たくなったワイシャツの裾をギュッと握りしめた。
「仕返しされる覚えねぇけど?」
「屋上でのことだよ王子様?」
「んなことで仕返し?大人のクセに随分と器がちっせぇんだな?」
イライラを誤魔化すように苦笑する黒澤拓海を見て、千秋は思い出したようだった。
屋上?
屋上でのことって確か………。
そ、そうだ!
黒澤拓海が吸っていた煙草を千秋が奪い、それを壁に押しあてたんだっけ。
それも黒澤拓海の耳スレスレに。
「話しててもムカつくだけだわ。つか、王子が来なかったとしてもシイにキスなんかしねぇって」
それはさっき黒澤拓海の過去を聞いたから頷ける。
けれど、それを知らない千秋は妖しく口元を歪めた。
「当然だろ?」