【続】俺様王子と秘密の時間


飛びこんできたって。

それを聞いたらさっきまでの強がりは、もう意味を持たない……。

あたしの腰を抱き寄せる千秋の、水を含んで冷たくなったワイシャツの裾をギュッと握りしめた。



「仕返しされる覚えねぇけど?」

「屋上でのことだよ王子様?」

「んなことで仕返し?大人のクセに随分と器がちっせぇんだな?」


イライラを誤魔化すように苦笑する黒澤拓海を見て、千秋は思い出したようだった。


屋上?

屋上でのことって確か………。

そ、そうだ!

黒澤拓海が吸っていた煙草を千秋が奪い、それを壁に押しあてたんだっけ。

それも黒澤拓海の耳スレスレに。



「話しててもムカつくだけだわ。つか、王子が来なかったとしてもシイにキスなんかしねぇって」


それはさっき黒澤拓海の過去を聞いたから頷ける。

けれど、それを知らない千秋は妖しく口元を歪めた。



「当然だろ?」

 

< 450 / 658 >

この作品をシェア

pagetop