【続】俺様王子と秘密の時間
あたしが千秋を見上げて視線を送っていることに気づいたのか、千秋は「フッ」と口角を上げた。
なによ、なによ……。
あたしのこと、もういいって言ったクセに!
悔しいくらいにあたしの心臓が速まるから、嬉しさを必死に隠す。
「そろそろ返してもらう」
「ひゃああああっ!」
千秋がいきなりあたしの腰に手を回して抱き寄せる。
濡れたワイシャツ越しにあたしより大きな千秋の手の感触がした。
「ガキに舐められたまま素直にシイを返してやるって言えるかよ」
「そーやって、駄々こねんのは“ガキ”のすることだぜ?」
ひぇえええええ……。
ガキ、を強調して皮肉をこめる。
「オレはな、あん時の仕返しのつもりで挑発しただけだ。なのに上手い具合のタイミングで噴水ん中に飛びこんできやがる」
黒澤拓海は忌々しげ(いまいましげ)に言う。