【続】俺様王子と秘密の時間
そんなこともわからないのかって言葉は、羽鳥にだけじゃなくあたしにも向けられた言葉のように聞こえた。
あたしは千秋の意図がわかっていなかったから。
なんで、なんでってそればかり。
「てめぇなんか王子じゃねぇ!」
「王子なんて、勝手につけられただけだ」
「てめぇは悪魔みてぇなヤツだ。ズル賢くて卑怯だ!」
「悪魔?光栄だな?」
口元だけで微笑する千秋は怖いくらいに冷たく笑う。
まるで、本物の悪魔のように。
「オレのせいで困って、椎菜はオレのことでいっぱいになるんだ」
そう言ってブラウンの瞳を妖しく緩めて、羽鳥を捉えた。
「最高の褒め言葉だな」
デビルのように黒い影を纏う。
千秋は吐き捨てるように言うと、その冷酷な瞳で一度あたしを見ると、本を拾い上げ去って行く。
湿っぽい部屋のせいで千秋の甘い香りはしなかった。