【続】俺様王子と秘密の時間


「情けねぇ。んなこと言って。相手が雅弥だと、余裕ねぇんだ」


ズキッ……。

息がかかるくらいの距離で呟いた千秋はいつもの千秋とは違って、ほんとに余裕のない表情だった。


あたしの目を見つめる千秋はなにも言わず、なにも聞かない。


ただひたすらにあたしを見つめるそのブラウンの瞳は、雨の中を放り出された子犬のように悲しそうで、胸の奥が痛かった。



早くなにか言って……。

お願いだから……。


フッと表情を緩めたかと思った時、千秋はそっと口を開いた。

 

< 572 / 658 >

この作品をシェア

pagetop