【続】俺様王子と秘密の時間


千秋はあたしになんて言おうとしたの……?

生ぬるい風が雨の匂いと一緒に恋の終焉を運んできた……。



「雅弥のそばに居ろよ」


言われた時、声が出なかった。

あたしにとって果てしなく長い、一瞬だった。

喉が熱くて涙腺が崩れたみたいに涙は止まらなくて、その涙が困ってるんだって思われたくなくて押し留めたいのに。


千秋があたしの頬を撫でるから、余計に溢れる。


その後、千秋はずぶ濡れになってることもどしゃ降りの雨も、羽鳥がそばで見てることも気にせずにあたしにキスをした……。

この世界にはあたしと千秋の二人だけしか存在しないような錯覚を起こす。

重なった唇が冷たかったのは雨のせいじゃなくて、それが最後の口づけだったからだと思った……。



唇が離れた直後、千秋は儚げに微笑むとあたしに背を向けて歩き出す。

 

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