【続】俺様王子と秘密の時間


ドクン……。


目の前に居る美結ちゃんが、凍りついてしまいそうなほどの冷たい眼差しをあたしに向けていた。

背中にヒンヤリとしたものが駆け巡り、あたしは声を詰まらせる。


なに……?

心臓が激しく音をたてる。


ふんわりした笑顔はそこになく、まるで別人みたいな美結ちゃん。

気のせいだと思いたかったけど、冷たい眼差しは間違いなくあたしに向けられていたんだ……。



何か言おうとしたその時、C組の教室から千秋と佐久間くんが廊下に出てきた。

壁に寄りかかるようにして立っている千秋の姿を、あたしは無意識のうちに目で追いかけている。


千秋はあたしに気づくこともなく、缶コーヒーを口に運び、佐久間くんと談笑しているようだった。


二メートルくらいの距離が、近いようで遠く感じた……。

 

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