【続】俺様王子と秘密の時間
「葉月」
佐久間くんが廊下の向こうからこっちに歩いてくると、はーちゃんに声をかけた。
てゆーか、葉月って言った……?
今まで、はーちゃんのことを名前で呼んだことあったっけ……?
「なっ、なに……?」
「今日は図書室来る?」
佐久間くんが話しかけても、はーちゃんはちょっぴりとげとげしい口調で答える。
メガネの奥の瞳が優しく緩む。
佐久間くんはクスリと笑ってはーちゃんを見つめている。
“彼女が忘れられない”と佐久間くんに言われたはーちゃん。
だからあたしはあれ以来、佐久間くんのことについて触れてない。
でも、なんかちょっと……いい雰囲気なんじゃない?
「きゃあ〜千秋せんぱぁあいっ」
近くで猫なで声が聞こえた。
ピョコンと飛び跳ねて千秋の側に駆け寄るのは、ふわふわの笑顔を浮かべる美結ちゃんだ……。