BLACK DIAMOND
見間違うなんて有り得ない。

少し癖のある栗色の髪に、透き通った茶色の瞳、すっと伸びた鼻の持ち主は、日本人としてはそんなに低くない身長の私が見上げているくらい背が高い。あの時のように長い指を顎につけて、それらを動かしながら何かを考えている様子だった。

言葉を失ってしまったかのような私は、エレベーターの扉が閉まって、どこかの階へ人を出迎えに行ってしまったことすら気がつかずに呆然と立っていた。


「賢い子は嫌いじゃない」


考える間も与えてくれない彼は、またも日本語を口にした。


「そんなに話せるなら、あえてと言うことですか?」

「そう言うより"わざと"かな」


クスッと彼は意地悪に笑う。


「だって、その方が面白い」

「お、面白いって!そんなっ!」

「でも、バレちゃったから……Game over」


にこっと笑って、彼は肩からかけている鞄を手で直すと、私の横を通り過ぎ再びエレベーターのボタンを押した。


「ごめんね、ちょっと外に用があるから」


そう言って、エレベーターは思いのほか早くやってきて、そこへ彼は乗り込む。


「な、なんであんな回りくどいことを?」


私のようやく開いた口から出た言葉は、最大の疑問。そして、その謎。


「うーん、なかなか面白くてこの遊びから抜けられないんだよね」


"遊び"と言い放った彼を乗せて、エレベーターは下へと降りていった。
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