全てを無に。
第三章~馬鹿な大人~
「…あんな奴、死んで当然だ。」


そう呟いたのは、渡邊先生だった。

渡邊先生は、中山のクラス担任だった。

だが、成績の悪い中山の事を酷く嫌っていた。

中山は成績は悪かったが、人一倍みんなに優しかったのだ。

今思ってみれば、中山は皐を助けようとしたのではないだろうか?

そんな考えが皐の頭の中を駆け巡る。


「当然の報いなんだよ…みんなを見捨てて、自分だけ助かろうとした…」

「先生、そんな言い方はないんじゃないですか?」


渡邊の呟きに、皐は反発した。

確かにそうだ。

中山は自分だけ助かろうとした、最初は。

だが、日記として周りの状態を残している。

きっと中山は後からみんなを助けに来るつもりだったに違いない。

そんなことも分からないのか?

思い返せば渡邊は、授業態度、自分に反発してくる生徒、成績の悪い者にはとことん厳しかった。

屁理屈も平気で言っていた。

表向きだけが良い先生だった。


「じゃあ、お前はどんな言い方をするんだ?死んでくれてありがとうか??」


渡邊は皐を見下しながら言う。


「ふざけないで下さい!!中山が死んじゃったんですよ!?なんでそんな事が言えるんですか!!!」

「あんな奴は居ても居なくても同じだよ。」


そう言うと渡邊はその場を去った。

悔しさと悲しさがその場に残った。

皐は膝を付き、崩れながら泣いた。



中山ごめん…

中山の事守ってあげられなかった。

悔しいよ…


しばらく皐は泣き続けた。




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