secret WISH



空に浮かんでいる大きな月が
雲の隙間から静かに俺をを照らしていた。

真っ赤な、真っ赤な月が。



今日はドルガーが良く出没するという町に行っていた。
任務を受けた時に聞いた話では、町の住民は全滅だと聞いていたが
実際、その町に赴けば確かに人は少なかったものの

全滅ではなかった。


“生きている人がいた!”
と喜ぶべきなのか。

“‥生きている人がいた”
と不審に思うべきなのか‥。


最近、こういうことが多い。

町の住民が皆死んだ。
なのに実際は生きている人がいる。

‥どうなっているんだ?

周りの奴らだって、首を傾げている。

思考を張り巡らせながら
はぁ‥と小さく溜め息を吐く。
すぅっと息を吸えば、
左耳のイヤリングが揺れる。

このイヤリングは、俺にとっての相棒。
ドルガーが現れた時に武器となる優れモノだ。

幼い頃から大事にコレを持っているのだが‥


「いつから持ってんだけな」


一人で呟きながら、暗闇が広がる前方を見ると
小さな光がぽつぽつと見え出した。

もう直ぐで、町に帰る。

ここら辺は町外れ。
こんなに夜が深くなれば辺りには誰もいないし
空へと響くのは、俺が歩くザリザリとした音だけ。

周りには民家もあるけど
時間的には、もう皆おやすみ中だ。

俺の隣にある教会は‥

「‥ん?」

町にある教会より、少し小さなこの教会。
牧師がとてもいい人で、信頼があるから
町から離れていてもここに通う人は多い。

じゃなくて、なんだアレ。

俺はいつの間にか立ち止まっていた。
教会の扉が、少し開いている。
その隙間からは、ゆらゆらと揺れる小さな光が。
俺は教会の前にある小さな階段を上がった。

‥おかしいな。
教会はこの時間、閉まっている筈だぞ?

< 2 / 173 >

この作品をシェア

pagetop