恋めぐり
オウリは微笑んで軽く会釈をした。

男も会釈をした後に、席を立って私の隣に座った。

「良い歌だった。これはそれの礼だ」

低く心地好い声だと思った。


「ありがとうございます」

「歌姫がいるからと来てみたんだが、本当だった。歌だけじゃなく本人も綺麗だ」

「お上手ですね」

オウリはカーラに向けていた様な顔ではなく、慎ましやかな女の様に男に接した。

「オレは口下手でね。本当のことしか言いませんよ」

「最近おみかけするようになりましたが、お名前を伺っても?」

「客の顔を覚えているんですか?」


「えぇもちろん。大切なお客様です。お顔を覚えるのは基本ですから。それに折角、私の歌を誉めてくれたお方をお名前でお呼びしたいわ」
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