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「ヨコヤ・・・。」
村中に臭いが広がっていた。その異様な臭いの元を辿り、村長だけでなく、村の男達が何人か、リーグの家を訪れていた。
「村長・・・。エリシアが・・・。」
振り返り言った。
「エリシアが?」
焼け焦げた死体は、男か女か判別する事さえ出来ない。
「はい、黒ずくめの男と朱ずくめの女・・・そいつらが突然入ってきたんです。」
村の中で、そんな突飛な格好をしたものを、誰も見ていなかった。リーグの父の言葉を、誰も信じていなかった。
「それで?」
村長の声は冷ややかだった。
「それから・・・私は殴られて、気を失って・・・。気がついた時、エリシアは家の中にいなかったんです。それで誘拐されたんじゃないかと思って。」
「思ってどうした?」
「みんなで、エリシアを探してもらおうと思ったんです。それで呼びに行こうとしたら、こんな事になっていて・・・。もう、何がなんだか・・・。」
「なるほど。」
やはり、村長の言葉は冷ややかだ。
「ヨコヤ、冷静に考えてみよう。」
「何をですか?」
村長の言葉に戸惑った。
「この村は、実に平和な村だな。」
「そうですね。つい、この間までは・・・こんな痛ましい事件とは無縁だった。」
「そんな平和な村に、不審者がいたらどうなると思う?」
「普通は気がつくでしょうね。」
村長の言いたい事が、まるでわからない。こんな問答をしている暇があるなら、一刻も早く、エリシアをこんな目に遭わせた犯人を捜すべきだ、そう考えた。
「村長、そんな事よりエリシアをこんな風にした犯人を、犯人を捜して下さい。」
「安心せい。犯人なら、もう見つけてある。」
「ほ、本当ですか?」
彼は喜んだ。が、一瞬だった。
「犯人は目の前におる。どうせ嘘をつくなら、もっとマシな嘘をつくべきだったの。」
「えっ、そ、村長。何を、言っているんですか?本当にいたんです。あいつらは、俺を殴って・・・本当なんです。お願いです。信じて下さい。」
その願いが、聞き入れられる事はなかった。
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