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「ふふふ。どうだい、焼け死ぬ人間の気持ちは?」
アイワイの体は、どうにもなっていない。苦しんでいる姿を除けば至って普通に見える。焼け死ぬと言っている意味がわからない。炎はどこにもない。
「エリシアとか言ったかね。あいつの死までの記憶がこんなところで役に立つとはね。」
“エリシア”と言う名前に反応した。
「エ、エリシア・・・を・・・。」
右手を掲げ、アイワイは何かを訴えようとしている。
「おや、なんか言いたそうだね。」
その時、ねねは気がついた。
「お前、そう言えば似てるね。あの女に・・・もしかして、姉妹かなんかかい?だとしたらラッキーだね。血縁の記憶はより鮮明に映し出されるからね。痛みも一入だろう。」
ねねの言うとおり、苦しみは尋常ではない。それもそのはずだ。今、アイワイはエリシアの記憶を辿っている。れれの魔法により焼き殺された記憶。それが鮮明にアイワイの体を蝕む。炎で焼かれたわけでもないのに、体はただれ始めている。
「熱い、痛い、熱いよ・・・。」
だんだんと、エリシアの事も気にかけられなくなる。言葉から“エリシア”はなくなっていった。

アイワイの変化に、ねねは気を良くしていた。
「あんたが死んだら、その服をもらってあげるよ。その方が服も喜ぶってもんさ。」
目的を果たせば、しばらくねねは自由だ。気に入らない朱ずくめの服を着なければいけないという事もない。
もう、服の事しか頭になかった。
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