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「今日もいい天気じゃの。」
ベンチに腰掛け、老人は小鳥たちとの会話を楽しんでいた。
「お前さんたちは元気じゃの。うらやましいのぉ、わしにもその元気を分けてくれ。」
そんな事を言いながら、手に持った餌を足下にまいていた。毎日、同じ時間に、同じ場所で餌を与え続けたおかげなのか、鳥たちの中には老人の手に乗ってくるものもいた。
「こらこら、そんなにがっつかなくても、たくさんあるから大丈夫じゃ。そんなに慌てるな。」
その時だった。一斉に鳥たちが羽ばたき、空に消えていった。
「な、なんじゃ。」
鳥たちを必死に目で追う。すると、視界の中に鳥以外のものが飛び込んできた。
「あ、あれは?」
今まで、見た事のないものだ。しかし、それは老人の好奇心を刺激した。
「ちょっと、気になるのぉ。」
こうなると、老人の好奇心は止まらない。
「bic。」
老人は小声で唱えた。
目に見えない細い糸が、何本も空へと向かっていった。
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