満たされしモノ
取り残された僕達三人は、三者三様の反応をしていた。


目を瞑り沈黙する穴夫。
何がおかしいのか、クスクス笑う閂。
そして、ひたすら首を傾げる僕。


「不知火の奴……突然どうしたんだろう……?」


僕が呟くと、閂は腹を抱え出した。この女も意味が分からない。


「クククッ、これでは貧乳も報われないな。ハハハ!!」


「閂は、不知火の言動が理解出来たの?」


「いやいや、私には貧乳の考えは分からないさ。ただ、刀矢が首を傾げてるのがおかしくてな……ククッ」


僕はどこをどう突っ込んでいいのか、皆目思い付かなかった。


ひとしきり笑った閂が涙を溜めた瞳を向けてきた。不覚にもドギマギしてしまう。


「それでは刀矢、私は委員会の仕事があるからもう行く。朝から楽しませてもらったよ」


軽く手を上げ、踵を返す閂。


……彼女は他の風紀委員の下へと戻って行った。


僕には楽しませたつもりが全くなく、いまいち腑に落ちない……


「あの女、組織の長のくせに堂々とサボっているとはな」


ああ、それは僕も同感だ。


「とにかくもう行こうよ。本当に遅刻扱いになるしさ」


「あの担任なら心配は無用だと思うがな……」


それから、取り立てて急ぐこともなく教室に向かう僕達だった。


 
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