てるてる坊主の恋
「ビックリしたー」と言いながら私の顔を覗き込むのは、正真正銘「清水隆太」その人で、美術室から出てきたということは…


「お前もここに用事?」

「あ、うん」

「何しに…って、アレしかないよな」


隆太が差す“アレ”というのは勿論てるてる坊主のことで、そう言う隆太もきっと同じ用事。


(誰の名前を書いたの?)

なんて、聞ける訳なかった。

告白する前に振られるなんて、そんなの寂しすぎるから。




「なんでこんな時間までいるの?」

これ以上この話題を続けたくなくて、無理やり話を変えた私に、声が少し震えてる私に、隆太は気づいたかな?


「あぁ、顧問にちょっと呼ばれてて」

「話長引いたんだよ」と続ける隆太に、私はいつもみたいに上手く相槌を打つことが出来なかった。




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