遠目の子鬼

うつり行く季節

終わりが来るなんて考えてもみなかった。


だから、本当に終わったこの瞬間、何をすれば良いのか分からずにちょっと戸惑ったのは事実だった。


僕の足は自然と個人練習に使っていた何時もの教室に向いた。


教室の前につくと、僕は、はぁっと呼吸を整えて、出来るだけ何時も通りに教室の扉を開いた。


教室の隅に、何時も通りに又兵衛が立っていた。


「よ、おわったか?」


又兵衛の言葉に、僕の心がずきんと疼く。


「…うん、おわった」


又兵衛の正面に立って僕は、そうぽつんと呟いた。
< 262 / 274 >

この作品をシェア

pagetop