遠目の子鬼

2) 又兵衛の世界

僕は再び首を横に振る。


「いいか、保孝――」


又兵衛はそう言うとひょいと右手を振って見せた。


同時に何時も練習の時に現れる青空と草原の世界に周りが変わった。


空が高くて爽やかに乾いた空気が吹き渡る。


太陽の光が柔らかくそして眩しく、鳥達が楽しそうに飛び交う世界。


「ここがその世界だ。俺の故郷さ」


又兵衛は、くるりと僕の方に向き直ると両腕を腰に当てて仁王立ちする。


僕は改めて紹介された又兵衛の世界をゆっくりと見渡した。


地平線まで届く草原…そこには視界を遮る物は何も見えない果てしない草原の様に見えた。


――しかし
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