昼の眼鏡は夜の華

不確かなモノ



昨夜はあれから会話が途切れ、

気まずい間を無くすためにお酒を注文しマクり、


案の定
記憶が欠けている…



私、最低だ。


昨日はどうやって家に帰ったのだろう?
酔ってベロベロだったに違いない。


優さん引いただろうな…

國崎の前では特に背伸びしていた小春は、
酒に逃げたことを、酷く後悔した。



『花川?』


聞き慣れない声に呼ばれ、我にかえる。


顔を上げると、
テーブルを挟んで向かい合うように
本を持った一人の男子生徒が立っていた。


加藤…
加藤タケル…あぁ、ボールの。


ネームプレートを見て、
薄れた記憶を紡ぎ合わせる。



『なーんで起きてんの?
いっつも寝てね?』

小春が両目を開けているのがそんなに珍しいのかと言うほど、

不思議そうにこちらを見て尋ねる。


…そう。

私はいつも、昼休みに図書室に来ては仮眠をとる。

帰宅して直ぐ寝るようにしても
やっぱり眠いし。

人があまり来ない、図書室の
浚に目立たない、1番奥の、
1番隅の席が私の昼寝スポットなのだ。


だが…

『何で知ってるの?』


『いびき凄いからな。』


な…
小春が驚いた表情をすると、笑いながら謝った。


『ゴメンゴメン
いや、俺こう見えて図書室よう来るし。
花川寝てるの知っとったけど、
敢えて起こさんかった。
あんまり気持ち良さそうに寝よるし…』


それは物理的に有り難いが…
寝顔見てました宣言とも取れる発言。

真偽は分からないが、
わざわざ掘り返すのも恥ずかしいので、
スルーすることにした。





小春はタケルの持つ本に視線を落としながら言った。

『何借りたん?』


タケルは言葉を濁らせながら、
本を後ろにした。


『あ…まぁ、ちょっとした本。』



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