ひぐらし
あたしの掌を指先で開いて太一が何かを乗せた。

リボンが付いた、端が潰れた箱。


「…幸せに、なれよ」


そう言って笑った太一はゆっくり部屋の景色に紛れて消えて。


あたしはようやく声を上げて泣き出す。


箱の中には銀色の指輪が入っていた。




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