聖花学園~花よ咲き誇れ~
「と、とにかく振り返らないで下さい。見送りは結構ですから」

 声が少しずつ離れていっているから、きっとドアに近づいているんだと思う。


 カチャ

 と音がした。


「それでは、遅くに失礼しました。おやすみなさい」

「あ、おやすみな――」
 バタン

「…………」

 最後に背後でそう言った寿先輩は、わたしの言葉も聞かずに出て行ってしまった。



「本当にどうしたのかな? 様子がおかしかったけど……」

 わたしはやっと振り返って、寿先輩が出て行ったドアを見た。


 そして前に視線を戻して気づく。

「寿先輩、ポットとカップ忘れて行っちゃった……」

 どうしようか迷ったけれど、寿先輩の様子がおかしかったのを思い出し、返しに行くのは明日の朝にしようと決めた。



 フラワーの皆にはこれからもお世話になるんだろうな。


 寿先輩が置いていったポットを見ながら、わたしはフラワーの皆に感謝の念を抱いた……。




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