無色の日の残像
「あたしがクウのことを好きなのは、つまり──そう、家族として好きだってことなの。男の子としてじゃなくて」

「? 好きで結ばれたら、家族になるんじゃないの?」

 お手上げです!

 羽海は心の中で叫んで、ぱったりとテーブルに突っ伏した。

「あはははは。つまり、羽海ちゃんは空気くんが好きだけど、それは恋してるわけじゃないってことだね」

 雨鳥が無色の前にコーヒーを置きながら確信犯的に遅い助け船を出した。

「そう恋! そういうこと! それが言いたかったのあたしは!」
 羽海が復活して身を起こした。

「恋?」
 無色がコーヒーを睨みながら、うめくようにその単語を繰り返した。

「そう、甘かったり苦かったり」
 言いながら、雨鳥が砂糖とミルクを無色の前に並べる。

「苦いのを飲み干すと少し大人になれる、コーヒーみたいなものだね」
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