無色の日の残像
「ヒトだけが、戦争を戦争と認識できる。殺し合いを認識できるんだよ」

「認識・・・・・・」

 キミは自分が何をしているのかわかっているのかな?

 無色の耳の奧で、また声が繰り返す。

「人間だけが死を知っているから。人間だけが生を知っているから。けれどね、戦争をする人間は、戦争が認識できない」

 花火の灯りにつられて寄ってきた羽虫が、ビールの缶にとまった。

「殺し合いは、認識を麻痺させる。獣や虫けらと同じだね。自分が何をしているのか、わからずに──ただキミの、キミの仲間の、生存率を上げて、競争に勝ち残るためだけの──獣だろう? こんなのは。そんな獣に戻ってしまうんだね」

「雨鳥さん、あなたは・・・・・・」
「キミが獣や虫けらでないというのなら」
 雨鳥は缶を持ち上げた。
 とまっていた羽虫が飛び立った。

「群のために動くだけの蟻ではないと言うのなら、何をしているのか認識しろ。命令じゃない、誰かのためでもない、キミは自分の意志で人を殺しているんだ。『それがどういうことなのか』認識できないのなら──人間に価値なんかないよ」

 無色は。

 透明を見た。

 それから空気と、羽海を見た。

 透明が、人だけが抱く美しい疑問の欠片を持ち上げて、透きとおった輝きをそっと星空にかざした。
< 87 / 132 >

この作品をシェア

pagetop