あの男は私に嘘をつく
『もしもし。』







「恭子だけど…。」










私だと分かって、美香子の声が明るくなった。










『どうしたの〜、電話なんてっ!!』











「美香子は…、好きでもない人と付き合ったこと…ある??」











『……』












この沈黙は、美香子が感づいことを示していた。だからこそ、次ぐ言葉が見つからなかったんだ。












『修二…??』













「うん……。」












『そっか…、やっぱり告白してきたのか……。』












ずいぶん沈黙が続いた。この沈黙を破った言葉に、私は驚きを隠せなかった。














『恭子は…ズルイよ……。なんでっ!!??好きでもないのに、修二利用しないでよっ!!』











「美香……っ。」










『いつも一緒にいたのに…私の気持ち、知らなかったの……??』












ツーツーツー












規則的な機械音が耳元で鳴り響き、私は石になったみたいに、動けなかった―――。
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