学園(吟)
俺は全て食べ終わり、食器を片付けた後に歯磨きを行う。

隣で寝ぼけながらも、器用に歯磨きを行う吟ネエがいる。

歯を磨く吟ネエも絵になるな。

さすが、渚さんから生まれただけはある。

「お前さ」

「え?」

「アドリブはしっかり取れるようになったほうがいいアル」

「あ、ああ」

多分、昨日のことだ。

朝から痛いところをついてくるな。

でも、ちょっとしたアドバイスなので嫌な気はしない。

吟ネエに何か言われると、もっと頑張ろうとやる気すら出てきた。

「ん?」

吟ネエをよく見ると、俺が貢いだリストバンドを装着している。

「それ、付けてくれてるんだ?」

「貢物を付けるのも悪くないアル」

言い方がどうであれ、俺は嬉しい。

気に入ってるのか気になったけど、付けてくれるだけありがたいんだ。

「やっぱり、似合ってる」

「これで世界は私に平伏すアル!」

眠そうなのが嘘のようで、朝から元気だ。

歯磨きを終了して玄関に向おうとした時、吟ネエが鞄の他に日本酒の瓶を持ってきた。

「何、それ?」

「コーラじゃ物足りないアル」

もはや、悪い病気としか思えない。

「学校の時ぐらいは我慢しようよ」

「私に禁欲ばかりをしろと言うアルか!?嘆かわしいアル!」

酒瓶を胸に抱きながら、奪われるのを阻止する。

「もっと、別の事に欲を注いでよ」

「嫌アル」

酒瓶と鞄を両肩に担いで、走って玄関を突き抜ける。
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