学園(吟)
五月雨

黒猫

寝ぼけ眼で目覚める。

時計を見ると、まだ余裕がある時間帯であった。

「眠いな」

昨日の事をすぐに思い出してしまうが、じっとしている場合じゃない。

ジャージを脱いで、制服を上に着る。

衣替えの季節なので、今日から半袖でもいいらしい。

なので、上は半袖カッターシャツだ。

少し肌寒くもあるのだが、些細な問題だ。

部屋から出て、吟ネエの部屋を通り過ぎる。

あまり会いたくなかった。

また、何を言われるのかわからない怖さがあったからだ。

一階に降りて、リビングに入る。

自分の願いは聞き入れられなかった。

俺と同じく、夏服の制服を着た吟ネエはすでに椅子に座っていて、リンゴをかじっている。

「おはよう」

吟ネエは答えずに、リンゴをかじり続けてる。

「うう」

ここまで露骨な態度を取られるとは思ってもみなかった。

俺は吟ネエの隣に座り、朝食のリンゴとジャムを塗ったパンを食す。

隣をチラ見してみたが、目を瞑ったままでかじっている。

まさか、寝ぼけているのか?

確かに、朝早いしな。

吟ネエの前で手を振ってみるが、リンゴをかじり続けている。

まさか、リンゴをかじる習慣が身についている?

「吟ネエ?」

「んー?」

名前を呼べば答えてくれた。

やっぱり、寝ぼけて聞き逃していたんだろう。

少しだけ安心する。

俺がビクビクしすぎていたのかもしれない。

本当なら吟ネエは部屋で寝てるはずなんだ。

昨日の今日でも、俺との約束を守ってくれてるんだ。
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