学園(吟)
リビングの机には朝食の目玉焼きと刻まれたレタスが皿に置かれてあって、ラップがかけられている。

「珍しいな」

渚さんも出かけてるようだ。

もしかして、吟ネエと一緒にどこかに出かけてるのだろうか。

朝食の横に置手紙らしき物があった。

『吟さんと少し出かけてきます。冷蔵庫の中にリンゴがありますので食べてください』

間違いなく渚さんの字だ。

この家では毎朝リンゴが出てくる。

吟ネエはリンゴが大好物で、朝食にないと不機嫌になる程なんだ。

多分、なかったら学校に登校しない。

だから、渚さんが忙しくてリンゴが用意されてなかったり家になかった場合は、俺が切ったり、早朝から買いに行ったりしていた。

今もそれは続いている。

冷蔵庫からケチャップとマヨネーズ、リンゴを取り出して一人席につく。

昨日とは打って変わって少し寂しい。

ラップを外して、調味料をぶっかけて静かに朝食が始まった。

冷めても美味い。

あっという間に完食し、少しだけテレビをつける。

日曜なので、面白みのあるものはやっていないようだ。

チャンネルを回しながら、12チャンネルに辿り着く。

丁度、みんなのうたが流れているようだった。

しかも、昨日、龍先輩が歌っていた奴だ。

本物は当然上手いよ。

でも、俺は龍先輩の声のほうが好きだった。

歌が終わって、しょうもなさそうな番組が始まったので電源を切る。

「そうか」

吟ネエが渚さんと出かけてるってことは、男についていく確立が減るわけじゃないか。

だって、滅多に二人で出かけないんだ。

それって目的があって出たわけだろ?

でも、油断したら、渚さんを振り切って行ってしまいそうだよな。
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