Symphony V
疲れた体を癒すため、唯は朝までゆっくりと眠った。気がつけばすでに陽が昇っていて、時刻は11時をまわっていた。


ホテルのとある1室で、佐藤が戻ってくるまでの間、村儀と情報の整理をすることになり、唯は手早くお風呂に入ると、村儀の部屋へと向かった。
レオンや巧、キアリーも、一緒にと村儀に懇願していたが、警察の古い捜査資料との付け合せもあるため、唯と2人だけでの作業となった。

窓際においてあったテーブルの上に、村儀がぶつぶつと呟きながら、いくつかの紙を置いていた。唯は、サイドテーブルに置いてあったミネラルウォーターをコップに注ぎ、村儀に渡す。

「キアリーに聞いたんですけど、村儀さん、昔はFBIにいたんですよね?」

村儀の手が一瞬止まる。唯は、村儀の置いていった紙を1枚1枚見ていく。

「あいつが話したのか?」

聞かれて唯は頷いた。

「キアリーが私の面倒を見てくれるってなったときに、教えてくれました」

「…珍しいな。あいつがそれを打ち明けるとは。まぁ…いい傾向といったところかな」

村儀がふっと微笑んだ。唯は少し驚く。


…笑えるんだ。この人。



「この中で、何か気になるようなものがないか。まずは確認してみてくれ」

言われて唯が頷いたそのときだった。

「村さん!た…大変です!」

ばたん!と大きな音を立てて、ドアが開かれた。村儀は思わず入り口に向けて銃を構える。

「…なんだ、佐藤。騒々しいぞ!」

むすっとした表情で、拳銃を戻す村儀。が、佐藤はそんなことはお構いなしといった具合で、そのまま話を続けた。
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